ビーグル水道を挟んで、フエゴ島のさらに南にあるのがチリ領のナバリーノ島です。この島には世界最南端の集落、Puerto Williams(プエルト・ウィリアムス)がります。ここは小さな集落ですが、チリ南極州の政府があります。チリ南極州の公称面積は広いですが、殆ど人の住んでいないパタゴニアの南部と、チリが領有権を主張しているだけで実効支配権のない南極大陸の一部ですので、極めて外交政策的政府です。
 この村にある物は何でも,、郵便局でも工場でも、「世界最南端の」が付きます。写真は、世界最南端のmuseo(博物館)で、フエゴ島やこの島に住んでいたヤーガン族を中心に、先住民の資料が集められています。マジェランが来たときに、マジェラン海峡の南側の島のあちこちでたき火をしていて、その島が火の大地()名付けられるきっかけになったのが、ヤーガン族です。彼らは、アフリカで生まれ世界に散らばっていった人類の中で、最も遠くまで来た人たちで、彼らが住んだナバリーノ島は、いわゆる人類のグレートジャーニーの終点になります。彼らは、赤ん坊のお尻に青い痣がある(蒙古斑)、我々と同じモンゴリアンです。寒風吹きすさぶこの地域で、裸に近い姿で平気で暮らしていた彼らでですが、ヨーロッパ人の持ち込んだ風邪等の伝染病にやられて、急速に人口が減って行きました。今では、純粋のヤーガン族の子孫はこの島に数人しか残っていないそうです。僕たちの船が着いたときに、先住民らしい老婆が数人、よたよたと桟橋にやってきて、船の前に素朴な木製の船の模型を並べて売っていました。博物館等の見物から帰ったときには、すでにいませんでした、特に帰ってすることもないと思うのですが。普通は土産物には関心ありませんが、同じモンゴリアンとして、彼らの歴史を思うと、買えなかったことに悔いが残りました。

 最後に、プエルト・ウィリアムスには、雲丹・蟹の加工場があり、日本に輸出しています。ヤーガン族の生活を支えていたと思われる、これらの海産物は、今では我々の食卓に並んでいます。

Shin in Chile

  Puerto Williams

ナバリーノ島の南には、Islas Wollaston(ウォジャストン諸島)があり、その最南端がCabo de Horno(ホーン岬)です。その南には、南極大陸まで、陸地はありません。

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