酒にはご注意!



酒は飲んでも飲まれるべからず。
先人の言い付けは、なるほど、間違いではなかった。
頭がぐらぐらする。飲み過ぎた。
サスケのやつ、もうちょっと優しく起こしてよ。
二度寝をかますサスケの動きに巻き込まされ、
危うくベッドから落ちそうになったナルトはぼっとした頭でそんな事を考えた。
…自分が裸でいることに気付くまでは。
そして、布団に包まっているサスケも恐らく裸である事に気が付くまでは。
床に脱ぎ捨てられたお互いの服から突き出された現実に、
ナルトは激しいパニックに落ちた。

やっちまった。
ああ、やってしまったのだ。
ナルトはベッドに背もたれて床に座って頭を抱え込んだ。
昨夜の記憶が津波のように押し寄せて来る。

サスケが『大好きだ』と言ってくれた。
その、思いも寄らなかった突然の告白にナルトは気が動転してしまった。
いつの間にかナルトはサスケとベッドの中で抱き合っていた。
誰からでもなく自然にキスが交わされたらもう躊躇う事は何もなかった。
サスケが欲しい。
自分の中の牡が猛烈な勢いでサスケを欲しがっていた。
そこでサスケはどうなのかとちらっと顔を覗いてみたのが最大の失敗だった。
真っ赤に染まった目元にうっすら涙を溜めて、
肩を震わせながら荒い呼吸を繰り返しているサスケの姿に
ギリギリ残っていたナルトの理性が吹っ飛んでしまったのだ。
それからナルトはごちゃごちゃ考える事を諦めて本能に全てを任せた。
サスケを組み敷いて、両足の間に身体を滑り込ませる。
男相手は初めだ。でも、男同士のやり方は知識として知っていた。
どっちかが上でどっちかが下になる。勿論、下の方が女役になるのだ。
なのに、あのプライドの塊のようなサスケはナルトが自分の身体の上に乗り込んで
馬乗りの態勢で上のポジションを取っても何も抵抗しなかった。
むしろ、上に乗ったナルトを誘うような朦朧な視線で見上げながら妖艶に笑ったのだ。
それが決定打だった。
火に油を注ぐのって、まさにあの笑顔の事なんだろう。
ナルトは欲望が導くまま、本能に全てを任せた。

* * *

「…ああ、やっちまったってばよ。ずっと隠すつもりだったのによ、
お前があんな事言うから我慢できなくなったじゃねぇか…」

だって、ずっと好きだったのだ。
願いは叶ってサスケを手に入れたのだから不満があるわけではないし、
酒のせいにするつもりなんか毛頭もない。
自分の素直な気持ちでサスケを抱いたのだから。
でも、やっぱ少し照れる。少し言い訳をしたい気分だった。
それでブツブツと独り言のように言い訳を呟いていたら、
いきなり後ろから冷めきったサスケの声が聴こえた。
どうやら、ナルトの独り言を所々聞いてしまったようだ。
それも、まずい所ばかりを。

「…つまり、オレのせいだと言いたいか?別に良いぜ。昨日の事は忘れてやる。
お互い、酒に酔った勢いでやらかしたささやかな失敗に過ぎないし…」

恐る恐るナルトが後ろを振り返ってみると、
サスケが凍りつくような瞳で自分を睨んでいた。
そして、まるで何もなかったかのように冷静な声で
昨夜の事を片付けようとするサスケにナルトは慌ててストップを呼びかけた。
やっと想いが通じたと思った矢先にこれはないだろうよ、サスケ!!

「ちょ、ちょい待ち、サスケ!お前、今何つった?
忘れる?どうして?お前、オレの事が好きなんじゃねぇの?」

「オレがいつ『お前が好きだ』っつった?オレはだだ…」

そう、確かにサスケは直接告白したわけではない。
ただ一緒にいる事が大好きだと言っただけだ。
でも、それって言い換えれば…

「…オレと何気ない会話をしている時間が大好き。
オレにだけは素直に本当の気持ちを曝け出せる。
お前な、それが『好き』という感情ではないとしたら何だというんだ?
ああ?答えてみろよ、賢いサスケちゃんよ!」

サスケがチッと舌打ちをした。
返す言葉がない。その通りだ。ナルトが好きだ。
ああ、バカな事をしたな。
酒の勢いっつーのを侮り過ぎた。
まさかこんなにも自分の理性が脆いとは思わなかった。
成り行きでキスしたら、その後はナルトの熱に流されるまま全てを任せるしかまかった。
上手く隠してきたつもりだったのに、ついボロを出してしまった。
あの超鈍感バカのナルトに自分の感情が先にバレてしまっただなんて、屈辱だ。

「答えられないなら、オレが代わりに答えてやるってば。
お前はな、オレの事が大大大好きなんだよ。」

普段になくナルトの舌がよく回る。
答えろと言ったからには答えを考える時間をくれ。
ナルトはサスケに少しの隙も与えず、声も高らかに自分から質問の答えを出したのだ。
そして、悔しいけどナルトのそれは勿論正解だった。
それでも今更ずっと秘めてきた気持ちを認めるわけにはいかない。
往生際が悪いサスケが何とか言い返そうと口を開いた瞬間、
ナルトがどどんとトドメを刺した。

「因みに、オレは自分の感情にも他人の感情にも鈍感で
すげー手がかかるバカヤロに片思い8年目だからね!」

口を開いたまま、サスケが固まった。
こいつ、今何と言った?!
「手順が狂ってしまったけど、もういいや。好きだ、サスケ。だからオレと付き合え。」

挙句には命令だ。
呆れて怒る気力もなくなってしまった。
こんな勝手な命令なんか拒否すればいいのに、
なぜかNOと言いたくない自分にサスケはため息を吐いた。
いい加減、自分の気持ちに素直になって受け入れるしかなさそうだ。

「…勝手にしやがれ。ドベ」

ナルトの完全勝利だ。サスケは負けを認めた。
先に相手に本当の気持ちを気付かれたのがまずかった。
嬉々として自分の腰に抱き付くナルトを見下ろしながら、
サスケは誓った。

…酒なんか、二度と飲むもんか!!!                      




end




『Everyday I Miss You』のAsurabi様の書かれた素敵小説をgetです!
実はこのお話は、私の描いたヘボマンガの続きを書いて下さったものなのです。
サスケが・・・ナルトが・・・かわいいーーーー!きゃーーー!!
こんな素晴らしい続きを書いて下さるなんて・・・Asurabi様、素敵なお話をありがとうございました!!